足の親指の爪、内側や外側をちょっと深く切っちゃった数日後、
なんだか、その周りが痛いなあ・・・って思ったこと、きっとある方もいらっしゃると思います。
今日は「巻き爪(=陥入爪)」の話をつれづれなるままに記そうと思います。
巻き爪の定義
- 陥入爪とは、爪甲先端や側縁が周囲軟部組織に食い込み、疼痛・炎症・感染・肉芽形成を起こしたものの総称である
- 拇趾(足の親指)に好発し、思春期前後から高齢者まで性差なく発症する
- 深爪などの爪の欠損により生じる場合と、爪が弯曲し変形することで生じる場合に分けられる
自分でさらに爪を深く切ると、爪が肉に当たらなくなるので一時的に痛みは良くなりますが、また爪が伸びてきて繰り返したり、事態を悪化させたりする可能性もあります。高校生の頃に巻き爪になった時、病院にはかからず、だましだまし暮らしていたのを思い出します。
これまで勤務していた総合病院では、入院患者さんに巻き爪が痛いって方がいれば、「あ、皮膚科に相談しておきますね」と、病室を去ります。
皮膚科の先生にお願いすれば、数日後、なんか銀色の板みたいなの(ステンレスプレート)が爪に挟まってて、「せんせー、痛くなくなりました」って言われて、「おおーよかったですねぇ〜」で、終わりでした。
ひょんなことから診療所勤務(しかも所長)となり、自分で巻き爪を診ることになるとは思いませんでした。
巻き爪にもいろんな治療方法があります。その中でも、比較的簡便なものをまとめてみようと思います。
巻き爪の治療法
1)巻き爪クリップ
A●azonとかで普通に売ってます。
結構高いですね。(※糖尿病やASOなどの疾患がある方は必ず病院へ行くことをお勧めしますが)病院に行く時間がないって方にはいいかもしれません。爪が若干厚かったり、短かったりしても使えます。
点滴エクステンションチューブ+テーピング+アロンアルファ法
点滴のエクステンションチューブに、縦にカットを入れて巻き爪部分に差し込みます。すると爪の肉への食い込みがなくなるので、痛みがなくなります。
そこをアロンアルファで固定し、チューブを爪の外側へ引っ張るようにしてアンカーテピングをします。これなら他の患者さんもあまり待たせずに済みそうです。
フェノール法(部分フェノール法)
巻き爪になっている部分を根元から抜去してフェノールで焼き付ける方法です。診療所の前院長がこの方法をよく使用していました。
用意するもの
1 液状フェノール(2〜3ml)
2 無水エタノール(5ml)
3 指ブロック麻酔で使うもの(1%キシロカイン®︎5ml、25G針など)
4 細めの綿棒
方法
まず、痛くないように指ブロック麻酔をします。その後、骨膜剥離子やモスキートペアンなどを駆使して、食い込んでいる部分を2mm幅ぐらい、爪を剥離します。爪の根元のところまで剥離して引っ張ると爪が抜けます。出血するので、なるべく爪床を損傷しないように気をつけます。
細い綿棒にフェノールを染み込ませて、抜爪した後に生じた部分(爪母、爪床、爪側面部分など)に押し当てます。フェノールが変性するので、20〜30秒ぐらいで、綿棒を新しいのに取り替えると良いとされています。処理後5〜6分して組織が白色に変化したら、組織に残された余分なフェノールを除去する目的でエタノール約5mlを処理した部分に注いで終了です。
抗菌薬の内服は不要、鎮痛剤は必要に応じて3回分ほど処方。その後は1週間後、1ヶ月後、半年後に来院させて爪の状態をチェックして治療終了です。
さいごに
以上、巻き爪の話でした。
痛くてどうしようもない時には、是非病院へ。
医療関係者の方は、覚えておくと何かの折に使えるかもしれません。
<参考文献>
- 「本日の診療サポート 陥入爪」
- 「フェノール法による陥入爪の治療成績」木股 敬裕、上竹 正躬 形成外科35(2):179〜190 ,1992
- 「離島発 今すぐ使える!とって隠岐の外来診療 小ワザ 離れワザ」白石 吉彦、白石 裕子 著
※白石Dr.の本は、診療上よく使わせてもらってます。一度、筋膜リリースの講演会へ出席させて頂きましたが、とても勉強になりました。気さくで素敵な先生でした。