都会ではなかなかみかけない
「ヘビ咬傷」
地域医療において、マムシ咬傷などは時々出会います。
先日看護師さんと話している時、マムシとヤマカガシについての話題になりました。
看護師さん曰く「ヤマカガシかマムシなんて普通にみればわかりますよ」
ヘビなんて全部同じに見えてしまう私。
正直、大きい病院にいる時はヘビに噛まれた人なんてほとんどきません。
教科書的なことは知っていても、実臨床としてのヘビ咬傷の治療は少ないです。
しかし僻地の病院であれば、マムシ咬傷にて当院を受診されるかたは時々いらっしゃいますので、しっかりした知識が必要だと考えました。
今回は、ヘビについて全くの素人の私なりにヤマカガシとマムシの違いについて勉強してみました。
ヤマカガシとマムシの見分け方
①
②
写真のどちらかがヤマカガシでどちらかがマムシです。
みなさんわかりますか??
違いがわかる人は、、、、私より蛇に詳しいです(笑)
正解は、①ヤマカガシ、②マムシ です。
どちらも咬まれた時の対処が必要なことがあるので、知ってて損はないかと思います。
では、それぞれの特徴について分析していきたいと思います。
ヤマカガシの特徴
ヤマカガシは
特徴的な体の色をしていますが、個体差や地域差が非常に強い
とのことで、赤色が混じったりしています。
北海道と沖縄を除く日本全国に生息しています。
主にカエルを主食としていて、本来おとなしいようです。
顔の特徴としては、やや顔に厚みがあることと、目玉が丸いことです。
(マムシは猫目みたいに細いです)
そして鱗がざらざらしているのも特徴のようです。
可愛い顔してますが毒ヘビです!!
マムシやハブと同様の出血毒を持ち合わせています。
先ほども書きましたが、本来おとなしい蛇なので咬まれることは稀です。なので見つけても捕まえたりしないようにしていれば咬まれる危険は少ないです。
田んぼなどでみかけても遊ばないように気をつけましょう。
マムシの特徴
全長 45-80cm程度と比較的小さな蛇になります。
見た目の特徴としては
全体的に胴が太くて、ヒョウ柄のような紋柄です
眼は猫のように細い目をして、頭の形が三角形に近いです。
こちらは北海道から沖縄までの日本全国に生息しています。
頭部に備わった体温感知期間を使って獲物を探し、ネズミなどの小型哺乳類、帰る、トカゲなどを捕食します。基本的に夜行性で、昼間は藪のなかや岩場の隙間などの涼しくくらい場所に身を隠しています。
ただ、妊娠したメスは栄養を多く必要とするため昼夜問わず餌を探して徘徊するようです。普段は夜行性でおとなしいマムシも、このときは人間と接触する機会が多くなってしまい、咬傷事故が増えるようです。
みなさんご存知かと思いますが、マムシも出血毒をもつ毒ヘビです。
年間3000件ほどマムシ被害があり、そのうち10人程度命を落としています。
死亡率は低いものの、処置が遅れたら重大になります。
咬まれたら、適切な応急処置を行なって病院を受診するようにしましょう。
もし蛇に咬まれたら
キャンプ場などで、咬まれた場合その場でできる応急処置として
①静脈圧程度の駆血
咬まれた後、蛇からの毒は静脈をつたって全身にまわる可能性があります。なので、駆血は重要です。しかし、やたらめったらな力で駆血する必要があるわけではなく、あくまで静脈圧(20 mmHg程度)の力で十分です。
②絞り出しや吸い出しによる排毒
毒を吸い出す吸引機があればそれを使うにこしたことはありませんが、ない場合は、しっかり絞って流水で流すのも一つの手です。また、よく「口で吸い出すと危険です!!」と注意書きがありますが、マムシやヤマカガシの毒は胃に入っても胃液で分解されるため危険性は比較的低いです。
しかし、口の中に傷があったりするとそこから血液内に入ってしまうことがあるので推奨はできないといったところでしょうか。
流水を使う方が無難ではあるかとは思います。
マムシ咬傷などの治療
マムシ毒が体内に注入されると、数分以内に主張・疼痛が出現し、30分経っても腫脹がなければマムシの可能性は低いです。
マムシは所見が派手なことが特徴になります。
腫脹部位の進展で分ける重症度分類
現在、重症度は腫脹部位の進展具合で評価します。
- gradeⅠ 局所のみの腫脹
- gradeⅡ 手・足関節まで
- gradeⅢ 肘・膝関節まで
- gradeⅣ 肢全体におよぶ腫脹
- gradeⅤ それ以上または全身症状を伴う腫脹
gradeがあがるに連れて重症度が増していきます。
短時間でgradeⅡ以上に達した症例では、抗毒素血清が適応とされています。
必要な処置
来院後すぐに行うのは、
洗浄と牙痕に沿った5mm程度の小切開
です。
昔はよく減張切開をされていたようですが、コンパートメント症候群の時のような大きな減張切開が必要になることは少ないとのことで、とりあえず小切開を加えます。
基本は入院管理です。
十分な補液を行なって急性腎不全の予防に努めます。
それと並行して、
・抗生剤投与
セファゾリンなどの第1世代セフェムなどが推奨されますが、文献によっては広域スペクトラムの抗生剤が推奨されているものもあります。
・セファランチン
詳細は今回しりましたが、元は薬草から抽出された生薬のようで、実験室的にマムシ毒に対する効果が証明されているようです。副作用がほとんどないため、ほぼ全例投与が推奨されます。
※ただ、小児への投与量は明確にされていないみたいです。
1日10mg投与して、症状に応じて漸減していきます。
また、初診時はセファランチンを投与した後に駆血を解除するようにします。
・ステロイド
強力な抗炎症作用かつ重症例には各種サイトカイン全身反応の予防効果がありますので、重症例にはソルメドロールなどのステロイド投与を行います。また、抗毒素血清投与の際のアナフィラキシー予防効果も期待できます。
・破傷風トキソイド筋注
基本は全例に行います。
・抗毒素血清
短時間でgradeⅡ以上に達した症例では、抗毒素血清が適応とされています。基本的に馬の血清ですので、アレルギー反応を起こすリスクがあります。予防として、ステロイド投与が推奨されます。
まとめ
佐賀大の先生方で監修されたフローチャートもありますので、こちらも参考にしてみてください。
マムシ咬傷は死亡者が毎年でるものの、適切な治療を行えば死亡は避けられます。
重症化させないこと、重症化した時に適切な医療機関へ搬送することが重要と考えます。
田んぼや川、山のなかに入られる方は十分気をつけてくださいね。