今日も、ダニに咬まれた人が来ました。
体長2.5mmの小さなダニです。数日前に咬まれたらしく、取ったときには既に死んでいました。
多分、一番右下のキチマダニってやつだと思います。
特に西日本ではダニが媒介する、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)が問題となっています。
今月に入り、犬からSFTSが媒介された、という症例も徳島県で発表されました。
m3.comより転載
今日は重症熱性血小板減少症候群(SFTS)の話です。
重症熱性血小板減少症候群(SFTS)とは
2011年に中国で報告された、ブニヤウイルス科フレボウイルス属のSFTSウイルスによる新興ウイルス感染症です。日本国内で最初に報告されたのは2012年の秋のことになります。マダニがウイルスを媒介し、ウイルスを保有するマダニに刺された人は、6日〜2週間後から次に示すようなSFTSの症状を呈するようになります。
SFTSの症状とは
身体症状としては、発熱、消化器症状(食欲低下、嘔気、嘔吐、下痢、腹痛)、リンパ節腫脹、筋肉痛、神経症状(意識障害、失語)、皮下出血、下血です。
血液検査所見としては、SFTSの名前の由来にもなっている、血小板減少に加えて、著明な白血球減少、AST、ALT、LDH、CKの上昇、血清フェリチンの著増が見られます。
尿にも異常が出ることが知られており、蛋白尿や血尿を呈します。
骨髄においては、血球貪食所見が見られます。国内発症の1例目では、この骨髄の状態から血球貪食症候群の臨床診断が得られたものの、確定診断がつかず、7日後に患者が死亡しています。
回復する患者は、3〜4週間で血液データも含めて改善していきます。
SFTSはどこで発生しているか
2017年9月27日時点で、これまでに日本国内で303人の報告があり、西日本を中心に報告が相次いでいます。
患者さんは中高年に多くみられ、春〜秋にかけての発生が多いことがわかっています。
世界レベルで見ると、主に東アジアで見られる病気となります。
SFTSの治療法は
「SFTSに対する特異的治療はない。集中治療のできる体制下に患者を管理し、血球貪食症候群やDIC(播種性血管内凝固症候群)に対する治療を中心に対症療法を行うほかはない」
とあります。
・・・要は、粘りの医療を行うほかありません。
SFTSの死亡率は
患者数の多い中国での致死率は、2010年〜2013年の統計では8.2%ではあるものの、国内における死亡率は19%〜28.0%と高率となっています。中国と日本との致死率に差がある原因として、日本でSFTSと診断されるのは重症例に偏っているからではないか、ということも指摘されています。
マダニに刺されないようにするには、刺された時の対処法は
こちらの記事をご一読ください↓
さいごに
マダニ自体は全国に存在しています。今後、西日本だけの問題ではなくなってくるかもしれません。
まずは刺されないようにする予防を、刺されてしまったら適切な対処を。
そして医療者側はSFTSをきちんと見抜く目を養わなければなりませんね。
<参考文献>
- 重症熱性血小板減少症候群(SFTS) 高橋 徹 山口県立総合医療センター血液内科 山口医学 第65巻 第1号 31貢〜38貢 2016年
- 画像・動画で見るマダニの種類、吸血方法http://www.bayer-pet.jp/pet/library/parasite/madani/madani03.html
- NIID 国立感染症研究所 重症熱性血小板減少症候群(SFTS)
- m3.com(医療関係者とその卵の方向け。情報収集サイトとしても有能ですので、是非ご一読ください↓)