僻地で陸マイラーの忘備録

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地域医療にて勤務中の総合診療医夫婦の日頃思ったこと、マイル、診療、子育てなどつれづれなるままに書くブログ

“僻地で陸マイラーの忘備録”

【書籍紹介】カール先生の大腸内視鏡挿入術

今日は、軽部友明先生著「カール先生の大腸内視鏡挿入術」について、恐縮ながらレビューさせて頂こうと思います。

 

カール先生の大腸内視鏡挿入術 [Non-loop法の挿入理論とテクニック]

カール先生の大腸内視鏡挿入術 [Non-loop法の挿入理論とテクニック]

 

 

近年、大腸内視鏡の挿入の主流となっている「軸保持短縮法」。

その中でも医療法人軽部病院健成会 軽部友明先生の考案された

「Non-loop法」は、患者さんへの負担が少ない挿入法であり、なおかつ、

なんとなく、ではなく、

「きちんとした言葉で挿入理論を説明されている」

という点で、非常に初学者に理解しやすい本となっています。

 

まず、当方の状況についてご説明します。

臨床経験としてはまだまだベテランとは言い難い当方(著:嫁)です。初期研修医時代に沢山させて頂いたお陰で、上部消化管内視鏡は出来るようになりました。後期研修に入り、大腸内視鏡も学び始めていたところで一旦産休となり、そのまま僻地勤務となりました。

せめて大腸内視鏡は問題なく出来るようになりたい・・・と思い、週に1度、外部の病院への大腸内視鏡研修に行っております。

本当はもう少し頻度を増やしたいところですが、僻地診療所勤務(医師1名)であり難しい状況です。

 

週に1度(しかも1〜2例/回)程度の大腸内視鏡研修で果たして1人で内視鏡検査を完遂出来るようになるものなのか。

しかも診療所勤務なので胃カメラでさえ普段触ることがないのに、です。

 

研修に行き始めてから暫くは、ほぼ「見学」でした。

当然、見ているだけで出来るようになるわけがありません。

 

暫くして実際に挿入をさせてもらえるようになりましたが、やはりうまく行きません。挿入の難易度が胃カメラとは格段に異なるからです。胃カメラは挿入の型がほぼ決まっています。しかし大腸カメラは患者さんの体型・年齢・腸管の自由度・腸管の長さ・腹部手術歴などで条件が大きく変わってくるため、簡単に言うと「一筋縄ではいかない」のです。

 

有難いことに、指導してくださる先生はとてもお優しい方々です。私がなかなか挿入できずに苦戦していても、自らギブアップするまで辛抱強く待っていて下さいます(流石に30分以上も全然進まなければ話は違うのでしょうが・・・)。

途中から指導医の先生に交代し、その後のリカバリーを目を皿のようにして見ていても、どのようにやったのか全然わからない・・・質問をしても、どうしても感覚的なお答えが多くなり、なかなか理解出来ない・・・という日が続きました。挿入の「方法」は一応勉強してきたつもりだったのに・・・

 

膨大な時間を自分のために割いてもらうのは、指導してくださる先生にも患者さんにも申し訳ないので、ちょっとでもヒントになるものは無いかと模索しておりました。

 

そんな時に助けになってくれた本がこちら、「カール先生の大腸内視鏡挿入術」です。

カール先生の大腸内視鏡挿入術 [Non-loop法の挿入理論とテクニック]

カール先生の大腸内視鏡挿入術 [Non-loop法の挿入理論とテクニック]

 

 最初にもご説明した通り、大腸内視鏡挿入法を、

なんとなく、ではなく、

「きちんとした言葉で挿入理論を説明されている」

という点で、非常に初学者に理解しやすい本です。

そして本だけでなく190分のDVD がついています。ほんの一部ではありますがYou ●ubeに落ちてましたのでご紹介しておきます。

 

www.youtube.com

 

Non-loop法が自分にとって革命的だったのが、

  • S状結腸の形を変えることにより、どうしても越えられなかったS-topを意識することなく超えることが出来る

(え!?S-top意識しまくってたんですけど・・・)

それから、

  • 右ひねりの操作になることが多いので、直腸からS状結腸にさしかかる手前で右手を内持ちとする

(確かに、今まで入れる時に右手が窮屈になることが多かったかも・・・)

  • MTでぶつかりそうになったらダウンでそのまま引けば簡単にMTの引き上げが可能になる
  • 肝彎を引きで入れるといった操作をすることなく、普通に進めればCに到達出来、後半が格段に早い

 

などなど、目からウロコな情報が沢山です。

 

ちなみに、S状結腸はup angleで進まない、と「カール先生の大腸内視鏡挿入術」にも明記されておりますが、今年の日本消化器内視鏡学会総会でのパネルディスカッションに於いても総じて同意見でした。

 

大腸内視鏡挿入「理論」を理解できた直後から、戸惑いながらも概ね10〜15分程度で挿入出来るようになってきました。簡単な症例ですら完遂出来なかった初期と比較すると天と地ほどの差です。

教えてくださる先生も、「もう一人で出来るね〜」と。今まで挿入のことばかりの話題だったのが、UCの場合の写真の撮り方やEMRのことなど、もう1ランク上のことを中心に教えてくださるようになりました。

習うより慣れろ、とよく言われます。手技的なものは、やらないと上手くなりません。ですが、「理論」をきちんと理解してからの上達スピードは格段に違いました。

カール先生は1〜2分足らずで挿入されているので、まだまだ到底及びませんが・・・これから更に研鑽を重ねたいと思っています。

 

もし大腸内視鏡が上手くならないとお悩みの方がおり、まだこちらの本を見たことがないとのことであれば、是非手にとってみてください。