僻地で陸マイラーの忘備録

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地域医療にて勤務中の総合診療医夫婦の日頃思ったこと、マイル、診療、子育てなどつれづれなるままに書くブログ

“僻地で陸マイラーの忘備録”

がん検診。どの検診を何歳から何年毎に受けたらいいのか?

先日、タバコを40代後半まで吸っていた私の父の肺のCTに、謎の影が写りこみました。

癌なのではないかととても心配しましたが、よくよく父から経過を聞くと、「一時期、緑色の痰がたくさん出たんだよね・・・」と。

しばらく経過観察していくと、結局は炎症性の変化だったようで、一安心です。

 

今日は「がん検診」の話です。

 

 

 癌の疫学

今、日本人の2人に1人が癌に罹患すると言われる時代です。

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国立がん研究センターによると、2016年に癌で死亡した人は37万2986人。男性の死亡数が多い癌の部位は「肺」、女性では「大腸」となっています。

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癌が進行すると何が大変か

癌という病気は、本当に、本当に大変です。

大変となる症状は部位ごとにかなり異なってはきます。

例えば上部消化管の癌で食道や胃の狭窄が進行した時には、唾液を飲み込む事もできません。

大腸癌など癌性腹膜炎となってしまうと消化管が全く動きませんので食事もままなりません。嘔吐と戦う日々です。

肺癌が進行すれば息苦しさで酸素が手放せないのはもちろん、喀血で突然亡くなる事も十分ありえます。

乳癌が骨に転移すれば簡単に脊椎が骨折してしまうケースも多々ありました。

緩和ケアなどにも携わってきましたが、全ての患者さんの苦痛を完全に取り除くことは本当に難しい。

 

可能であれば癌の早期発見早期治療が望まれる、という理由はここにあると思っています。

 

しかし、

「何歳からどの癌の検診を、どのぐらいの間隔で受ければいいの?」

「市町村からがん検診のお知らせが来るけど、受けておいた方がいいのかな?」

結構、謎な部分も多いかと思いますので、忘備録的にまとめさせていただきます(※癌検診適応者のエビデンスを統合させて結論を得ることはなかなか難しいとはされていますが、あくまでも参考までに)。

 

何歳からどの癌の検診を何年毎に受ければ良いのか

基本的には市町村から「がん検診を受けましょうねー」というお知らせが届きますが、厚生労働省が定める指針ではこのようになっています。

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では、それぞれの がん検診毎に見ていきます。

 

胃癌

問診と、胃X線もしくは上部消化管内視鏡検査:50歳以上の男女に2年1回

 胃X線は、いわゆる「バリウムの検査」っていうやつです。胃X線はバリウムを飲むだけなので比較的簡便にはできますが、評価が結構難しいです。一方上部消化管内視鏡検査は「胃カメラ」の検査であり、これは検査を受けるのが結構大変(喉に麻酔をかけたり、嘔吐反射が強い人には鎮静をかけたりなど)ではありますが、胃X線よりも明らかに情報量が多いです。胃粘膜の細かいびらんや萎縮性胃炎があるか、ピロリ菌が胃の中にいそうかどうかなどもわかります。

 

 

子宮頸癌

子宮頸部擦過細胞診:20歳以上の女性に2年に1回

 これは自分にも検診のお知らせが届きます。しかし、妊娠すればその時に必ず子宮頸癌の検査は行われますから、まだ検診として自分は受けたことがありません・・・。

 流れとしては、問診・視診・細胞診を行い、異常があれば精密検査(コルポスコープや組織診、各種画像検査など)を行うことになります。

 子宮頸癌ワクチンについて色々言われて久しいですよね・・・。最近では、ドラマ「コウノドリ」でも扱われました。子宮頸癌ワクチンについてもいつか書きたいと思います。

 

 

肺癌

胸部X線:40歳以上の男女に年1回

※低線量CTによる肺癌検診:ルーチンでは推奨されない

 経験上、CTでの肺癌検診で引っかかって、病院を受診する人は結構な割合でいます。その理由として、「炎症性の変化」も「要精査」で返ってきちゃうことが多いからです。Thin sliceで再度病院でCTを撮り直したりもするのですが、それでも結構な割合で経過観察となります。

 CTでの偽陽性(本当は癌じゃないけど、癌かもしれないから調べてねって言われる割合)は確かに多いし、どうなのかな・・・と思ったりもしますが、喫煙者ではちょっと話が違います。喫煙者における、胸部X線とCTとを比較した研究があり、55歳〜74歳までの喫煙者を2つのグループ(胸部X線での検診 対 CTでの検診)に分けて追跡調査したところ、CT群がX線群に比較して、肺癌による死亡率が20%も減少し、総死亡率が6.7%減少したというものです(論文があります→NEJM 2011;365:395-409)。この結果から、ヘビースモーカーの人にはCT検診を受けてもらった方が良いかとは思います。

 喫煙者にはCT検診が勧められる一方で、非喫煙者〜軽喫煙者でのランダム化比較試験は現在行われている最中のようで、X線検査がいいのかCT検査がいいのかはまだ結論が出ていません。

 

 

乳癌

マンモグラフィ:40歳以上の女性に2年に1回

 一般的に、30歳代のマンモグラフィ検査・超音波検査・MRI検診は、死亡率減少効果が証明されていません。しかし、乳癌の家族歴が濃厚である人に関しては若いうちから積極的に受けるべきとは思われます。

 

 

 

大腸癌

便潜血(2日法):40歳以上の男女年1回

 便潜血検査は、便を提出するだけなのでとても簡便に出来ますし、精度も良いです。便潜血検査で陽性になった場合には、その後高い確率で大腸カメラをすることになると思います。

 大腸カメラは、検査をするまでが結構大変です。全大腸内視鏡を行うには、下剤の力を借りて腸の中を空っぽにしなければなりません。(検査自体が大変かどうかは、検査をする医師の力量だけでなく、それまでの腹部手術があるかどうか、痩せた高齢女性など、腸管がねじれたり伸びやすかったりするかどうかなどにもよりますので一概には言えませんが・・・)

 がん検診で引っかかったから大腸カメラを受ける、という人が多いかとは思いますが、40歳を過ぎたら大腸カメラは1回は受けてみるべきという意見もあります。その検査の際にポリープなどの異常があったかどうかによるかとは思いますが、異常がなければその後の大腸カメラ検査は10年や5年に1回で良いと言われることが多いです。

 

 

前立腺癌

PSA検査:50歳以上の男性

 日本泌尿器科学会においては、50歳以上の男性を対象として血液中のPSA値を測定することによって前立腺癌のスクリーニングを行うのが良いとされています。PSAは年齢によって上昇する傾向があるため、年齢によって基準値が異なります。

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上の表にあるように、PSAの値がどのくらいであったかによって、次のPSA値の検査をいつ行うべきかが決まってきます。

 80歳以上については基準がちょっと難しくはなりますが・・・比較的お元気な人で、排尿障害を強く認める場合や、大腸カメラの前の直腸診で、石のように硬い前立腺が発見された、などとといった方にはPSA測定の意義があると思われます。その際の基準としては、7〜10ng/ml以上を目安に専門医を受診するのが良いでしょう。

 

 

さいごに

以上簡単ではありますが、がん検診についてつれづれなるままに書いてみました。

がん検診は、費用対効果がどうだの、偽陽性が出てしまって鬱症状に陥る人がいるだの、色々なことが言われますよね。

検診を語ると色々難しい問題も絡んできますが・・・結局、自分の体は最も大事な資本の一つであることには変わりありません。

今年も本格的に寒くなって来ましたので、皆様体調にはお気をつけください。

 

 

<参考文献>

国立がん研究センターがん情報サービス

今日の診療サポート

アストラゼネカHP

日本癌治療学会HP

 

 

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(色々検討しましたが、医療保険には入っていません。)

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