橈骨遠位端骨折によく併発する「尺骨遠位端骨折」
文献にもよりけりですが、橈骨遠位端骨折の約3-8%に合併します。
茎状突起骨折をはじめとして頻度は多い部分ではありますが、手術かどうかに関してはまだまだ議論が別れているところで、一定の見解は得られていません。
今回診療中、尺骨遠位端骨折の単独骨折の症例を経験しました。た
尺骨遠位端骨折は橈骨遠位端骨折とよく合併してみられますが、尺骨遠位単独骨折はそれと比べると稀な印象です。
報告例も少なく、治療法はまだ明確な基準はありません。
今回知り得たことを忘備録的にまとめます。
biyani分類
Type1 尺骨の骨幹端の単純関節外骨折
Type2 尺骨の骨幹端と茎状突起のT字orY字骨折
Type3 尺骨の骨幹端と茎状突起の剥離骨折
Type4 尺骨の遠位端粉砕骨折
尺骨遠位端骨折の分類方法はいくつかありますが、この分類が使用されることが多いようです。
type1,3は
・骨皮質の接触面積が広く、安定しやすい
・関節外骨折なので保存治療を選択しやすい
という記載でした。
また、biyani type 2,4で粉砕の強い症例では内固定を行なっても整復位の保持が困難なことが多いため、Type2,4は手術が推奨されるようです。
尺骨の安定性が十分でなければ、回内筋に牽引され橈側転位をきたす可能性もあり、橈骨固定後に不安定性がないか
確認するのがbetterでしょう。
ただ、重症度が低い症例でも、仮骨がDRUJ内に侵入することで前腕の回旋制限がでることもあります。
治療における合併症
手術療法、保存治療いずれも合併症がありますので、それを分けて記載しました。
手術の合併症
金属による刺激症状
尺骨神経背側枝の損傷による尺側部痛
保存治療の合併症
変形治癒、偽関節、握力低下
遠位橈尺関節の離開や尺骨変形残存、余剰な仮骨による回内外制限
が挙げられます。
尺骨単独骨折なら前腕早期回旋運動の早期リハも可能?
尺骨遠位端単独骨折(Biyani分類Type1のみ)に実施したもので、
「掌側シーネ固定で、受傷3日以内から前腕回旋運動を許可し
受傷3週間後より掌屈・背屈運動も許可」
というプロトコールで行なって治療成績はよかったという報告もあります。
(藤田保健衛生大学 鈴木先生ら)
尺骨茎状突起骨折はどうする?
橈骨遠位端骨折の1/3は尺骨茎状突起骨折を合併するといわれています。
この場合、TFCC(三角繊維軟骨複合体)損傷の可能性が否定できません。
尺骨の固定するかどうかは、橈骨固定後のDRUjの安定性で判断すべきです。
術前評価でTFCC損傷を疑う所見として
・舟状骨-月状骨間の開大
・Gilula線の不整
などの気をつけて画像所見をとる必要があります。
尺骨遠位端単独骨折はどうするか
橈骨遠位端骨折の合併がない場合は、橈骨の短縮は起きないので、橈尺骨骨折と比べると安定性が得られやすいと考えられます。
角状変形や背屈転位が許容できるかどうか、骨折型はどうか、Ulner balanceはminus balanceではないか、などを評価して総合的に判断するのがよいかと考えます。
まとめ
biyani分類をbaseに橈骨との不安定性を評価しつつ治療方針を決定する必要があるようです。
また追加すべきことがありましたら記載していこうと思います。
※もし間違った記載がありましたら、教えていただければ幸いです。