僻地で陸マイラーの忘備録

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地域医療にて勤務中の総合診療医夫婦の日頃思ったこと、マイル、診療、子育てなどつれづれなるままに書くブログ

“僻地で陸マイラーの忘備録”

骨粗鬆症と変形性関節症との関連について

骨粗鬆症、変形性関節症

いずれの病気も、一般の方もよく聞かれる名前だと思います。

地域医療外来では最もよく出会う疾患です。

 

  • 骨密度低下に伴って骨折リスクが増える骨粗鬆症
  • 関節軟骨の減少によって関節がいたむ変形性関節症

 

それぞれ全くの別の病態と考えられてきましたが、最近は共通した病態が悪影響を及ぼすことがわかってきました。

今回はやや専門的な内容にはなりますが、比較的簡単な単語で、

骨粗鬆症の治療と変形性関節症の治療の共通した治療方針について勉強したことをざっくりまとめます。

 

 

 

破骨細胞が活性化している人は変形性関節症が進行しやすい?

最近の論文で、

NTX(破骨マーカー)が高値の人の経過を追ってみると、変形性関節症が進行しているというデータが出てきているそうです。ミクロレベルの話では、TRACP-5bが軟骨破壊の進行を進めているようです。

 

このことはすなわち、

骨密度の減少幅が大きい人ほど、変形性関節症の進行が早いと考えられます。

 

さらに骨シンチでも変形性関節症と骨粗鬆症の関連がみられており、異常集積が強い部分(破骨細胞が活性化している部分)は、数年後に変形性関節症が進行している、というデータがでてきているそうです。

骨吸収マーカーをフォローする際には、変形性関節症のフォローも含めてデータを読むといいかもしれません。

 

 

骨粗鬆症や変形性関節症の増悪因子がたくさんある人が進行しやすい

 女性の方は閉経後に女性ホルモンが減り、骨粗鬆症が進行しやすい状態となります。そのため、骨粗鬆症は男性よりもむしろ女性に多いです。

 ただ、骨粗鬆症のリスクは他にもステロイドやアルコール多量摂取、ホモシスチン尿症、COPD、関節リウマチなどが挙げられますので、決して女性だけの病気ではありません。

 また、変形性関節症は遺伝要素などに加えて、体重や生活環境因子なども増悪に関与してきます。

 いずれにも共通して言えることですが、どれか一つが当てはまるから増悪するという考えではなく、リスク因子をたくさん持っている人は、よりその疾患になりやすいということになります。

 

 

骨密度を上げるだけではだめ!!質のいい骨が骨折を予防する 

骨は骨形成と骨破壊という再生と破壊のサイクルを繰り返しながら、常にいい骨を生成しようとしています。若いうちは質のいい骨がどんどん作られますが、年齢を重ねるごとに骨を生成するコラーゲンに老化がみられるため、骨質が悪くなる傾向にあります。その原因は、加齢に伴って出てくる活性酸素や、フリーラジカルがコラーゲン架橋を乱すためです。

 

そのほかにも糖尿病患者などでは、ペントシジンなどに代表されるAGEs(終末糖化産物・悪玉架橋)が骨の中に増えてくるので、骨質が悪くなるため骨折のリスクがあがります。

 

たとえ高い骨密度であったとしても、下記の因子が存在することによって骨折しやすくなるるので注意が必要です。

  • コラーゲン異常
  • 2型DM(2型糖尿病)
  • CKD(慢性腎臓病)
  • メタボリックシンドローム
  • NAFLD(非アルコール性脂肪性肝疾患)
  • HT(高血圧症)
  • 脳卒中
  • 虚血性心疾患

 

 

低骨密度と骨質低下、骨折リスクはどうなる?? 

骨密度が低下していると 3.6倍

骨質が劣化していると  1.5倍

両方が合わさるとなんと 7.3倍まで骨折リスクが増加します。

 

さらに、骨質低下・骨密度低下が重なると重度圧潰骨折や多発骨折につながるので注意が必要です。

先ほども一部記載しましたが、

  • DM
  • CKD
  • 腹部大動脈石灰化>2椎体以上
  • ステロイド服用
  • VitD不足

は骨折リスク増大因子となっていますので、他の合併症がないか注意しましょう。

 

BP製剤の長期使用は不定型骨折の原因となる

整形外科では常識ですが、BP製剤の長期投与は不定型骨折のリスクとなります。

BP製剤は破骨細胞を抑制することで骨密度低下を防ぎますが、骨形成側の条件が悪いと質の悪い骨ばかり形成されたままリモデリングされません。柔軟性の低い骨ができてしまい、通常とは異なる骨の折れ方をしてしまいます。

 

BP製剤は様々な種類がでておりますが、それぞれアパタイト内に留まる時間や作用が異なるため、長期投与を考える場合にはそれらも考慮して薬剤を選択しなければなりません。

 長期投与を考えるのであれば、完全に破骨細胞の働きを0にしてしまうような薬剤は避けるべきでしょう。

また、骨形成を促すような薬剤も併用することがすすめられます。

 

 

ヒアルロン酸関注は人工関節手術までの期間を延ばす作用がある 

膝の関節注射を人工関節手術前に何回行ったか、患者さんにアンケートとったところ、関節注射の回数が多い人ほど手術になるまでの期間が長かったそうです。

 

アメリカではヒアルロン酸注射は意味がないという意見もあるそうですが、関節注射で治療効果がみられる論文も多いのもまた事実です。

私の実臨床の経験も踏まえて考えると、ヒアルロン酸の効果はあると思います。

 

 

まとめ

少し専門用語も入ってしまったので分かりにくいかもしれません。そして、自分が理解しやすいよう結構簡略化して記載していることもあり、専門の方からみれば微妙な内容かもしれません。

 

骨粗鬆症の治療に関しては、奥が深く勉強しなければならないことがたくさんです。

骨粗鬆症は患者さんの病識が乏しい方も多く、血圧などに比べるとなかなか治療継続率が低い分野になります。啓発も大事だなと思う今日この頃です。

 

どんどん治療介入していければよいかなと思います。

 

今回は以上です。ありがとうございました。

 

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