研修先の病院で、2秒に1回しゃっくりが出る患者さんに出会いました。
高齢の男性で、もう1ヶ月に及ぶとのこと・・・。
今日はしゃっくりについてのお話です。
しゃっくりとは
しゃっくりとは、横隔膜の不随意なけいれんにより、呼気時に突然発声する状態とのこと。息を止めるだとか、コップの反対側から水を飲むとか、冷たい水を飲むとかなどの方法をとると、往往にして止まることが多いですよね。
自分はコップの反対側から水を飲むと100%止まりますので困ったことはありません。
がしかし、世の中にはしゃっくりがとてつもなく長い時間止まらない人が存在します。
しゃっくりの原因
しゃっくりが48時間以上続いている時には、何らかの病的状態にあると考えた方が良さそうです。
緊急の対応を必要とする疾患としては、
- 頭蓋内病変(脳血管障害、転移性脳腫瘍など)
- 神経疾患(神経ベーチェット)
- 電解質異常(Na、K、Ca)
- 肝・横隔膜下膿瘍(アメーバ、クレブシエラ、セラチアなど)
- 冠動脈疾患
- 胸部大動脈瘤
- 胃癌などの悪性腫瘍
よくある疾患としては
- 上部消化管病変
- 糖尿病
- 外科手術後の障害
それから上に挙げた脳血管障害や冠動脈疾患も頻度としては高いようです。
まれな疾患としては、
- 巨細胞性動脈炎(頭痛が特徴となる疾患です)
- 薬剤性(ステロイド・バルビツール酸系・BZ系・オピオイド・メチルドパ・抗菌薬・抗がん剤など)
- 胸部帯状疱疹
- てんかん
が挙げられます。
どれにも当てはまらないのであれば、心因性として対応することになると思います。
しゃっくりが止まらない時に行う検査
しゃっくりの原因診断のためには特殊な検査が必要になることも多く、しゃっくりが48時間以上続く時には、検査可能な病院を受診してもらう必要が出てきます。アプローチとしては以下のように行います。
確かに、下方にいくにつれて診療所レベルでは出来ない検査ばかりです。
しゃっくりの治療
まずしゃっくりの原因疾患を治療します。肝膿瘍であればドレナージや抗菌薬を、電解質異常であればその補正を、冠動脈疾患であればカテーテル治療などを・・・となります。
しゃっくりそのものに対する薬物治療としては、
- クロルプロマジン(保険適応)
- バクロフェン
- メトクロプラミド
- ガバペンチン
- エチゾラム
- クロナゼパム
- ハロペリドール
- 芍薬甘草湯
などがありますが、確固たるエビデンスがあるわけでは無いようです。しかし、いくつか論文を読んでみると、バクロフェンが最も効果が高いようではあります。が、しゃっくりを止めるために処方したバクロフェンに関連する医療事故(バクロフェン中毒)も起きており、処方の際には注意が必要になります。
胃炎や胃潰瘍など、上部消化管の異常の存在が疑われる場合にはPPIの投与も検討されます。
しゃっくりそのものに対する非薬物治療としては、横隔神経ブロックが挙げられ、一定の効果があるようです。
しゃっくりのギネス認定
ちなみに、しゃっくりがずっと出続けて、ギネス認定された人は、アメリカのチャールズ・オズボーンさん。68年間続くしゃっくりだったそうです。
さいごに
色々調べてみてわかりましたが、たかがしゃっくり、されどしゃっくりのようです。しゃっくりが48時間以上続く人は、一度病院の門を叩いてみると良いかと思います。
<参考文献>
・難治性吃逆患者8例の治療経験
榎本澄江 寺田 哲 木村理恵 林 映至 新井丈郎 奥田泰久
日本ペインクリニック学会誌 Vol.24, 2017
・頭部MRIによる延髄梗塞における難治性吃逆責任病巣の検討
植村 順一 井上 剛 青木 淳哉 佐治 直樹 芝崎 謙作 木村 和美
臨床神経 2014;54:403-407
・霊菌による肝膿瘍の1剖検例
山田 克浩 長沼 和男 庭山 清八郎
日本内科学会雑誌51 巻 (1962-1963) 11 号 p. 1460-1464
・今日の臨床サポート しゃっくり