自分が子供のオムツを替えている時も、ブンバボーンを踊っている時も、
どんどん医学は進歩していくものです。
かつて学生時代に教わったことが、知らないうちに変化していっています。
今日は肝硬変とエコーについての話です。
昔の肝硬変の診断方法
学生時代、肝硬変の診断については以下のように教わりました。
「C型肝炎ウイルスや、アルコールなど様々なものが原因となる、肝硬変。肝硬変の線維化の程度は肝臓の組織を一部とって、それを顕微鏡でみる肝生検でしか判断することは出来ません。なので、肝生検が出来ない場合の肝硬変の診断は問診や採血・画像検査で肝臓の形をみるなどして総合的に行う他ありません。」
「ふむふむ、そうなのかー、結局生検しないと何となくしかわかんないんだなー」
なんて、思っていました。
しかし、超音波機器のメーカーさんは日々頑張っておられるんですね。
今や、「エコーで肝臓の線維化の程度がわかる時代」になりました。
どうやってエコーで肝臓の線維化の程度がわかるの?
エコー界では、SWM(Shear Wave Measurement)と呼ばれるシステム既に本格的に導入されており、この超音波機器を置いている病院も増えてきている模様。
SWMとは、組織へ剪断波(=Shear wave)が伝播する速度の速さを判定し、その組織が硬くなっているかどうかを判断するものです。硬くなっていると、剪断波の速度が速くなるようです。
プリンは柔いですね。
知り合いのすごい超音波技師さんが
「要はひずみを見てるんですよ」っておっしゃってました。
今回は省きますが、他にも超音波には色々な機能があります。肝臓の中に占拠性病変があった場合に、それが癌なのかどうなのかを剪断波を利用して推測したり(Shear Wave Elastography)、血流の程度をみて判断したり・・・。エコー界の進歩はすさまじいですね。来年の6月に大阪で開催される超音波学会に行ってみたいものです。マニアしかいらっしゃらないようです。
Vs値による肝線維化の分類
硬くなるとVs 値(m/s)が大きくなります。つまり、肝臓の線維化が進んでいれば進んでいるほど、肝硬変になっていればなっているほどVs値が大きいということです。
こんな感じでVs値が求められる模様。物理は選択しなかったので、全然わかりません。
実際の検査画像がこんな感じです。
右側の赤丸の部分で示したVs値を確認します。
Vs値による、肝臓線維化の分類としては以下のようになります。
F4になると肝硬変です。
さいごに
今回は、エコーで肝臓の線維化の程度がわかる時代になっていることをお伝えしました。
昨今の医学の進歩は本当に凄まじいです。例えば、かつては不治の病(に近い)と教わったC型肝炎ウイルス感染症も、12週間の内服で治癒が目指せる時代になっています。さらに先月からは、8週間の内服でもOKと言われるものまで出てきました。
何事も、日々も情報収集は大事ですね。
<参考文献>
・Real-time Elastography, Shear Wave Measurementを用いた非侵襲的肝病態診断:一本のプローブで身近なものに
矢野 典久、工藤 正俊 近畿大学医学部消化器内科
・日本超音波医学会 超音波エラストグラフィ診療ガイドライン:肝臓
https://www.jsum.or.jp/committee/diagnostic/pdf/elast_kan_ja.pdf
・肝臓線維化診断へのアプローチ 飯島 尋子兵庫医科大学超音波センター
http://www.innervision.co.jp/ad/suite/toshiba/seminarreport/140801
・一般社団法人 日本超音波検査学会HP
・医療社団法人 奥野消化器内科クリニックHP
日々の新しい情報収集のツールとして、日経メディカルやm3.comをよく利用しています。m3.comについては過去記事もありますのでご一読ください。