僻地で陸マイラーの忘備録

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地域医療にて勤務中の総合診療医夫婦の日頃思ったこと、マイル、診療、子育てなどつれづれなるままに書くブログ

“僻地で陸マイラーの忘備録”

痛風の治療について

以前外科に勤めていた頃は、まず診ることはなかった

 

痛風(高尿酸血症)。

 

 

インターネット上で確認できる、最新の

「高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン」は2012年。

そこからまた新しい薬も出ているようですので、早く改訂されないかなと思っているところです。本も調べたけどまだ出てないみたいだし(出てたらごめんなさい。)

 

 

今日は、新しい薬の話題も交えつつ、痛風についてつれづれなるままに記そうと思います。

 

 

痛風(高尿酸血症)の定義

 

「男女とも、血清尿酸値が7mg/dl以上を認める状態のこと」

 

とあります。女性は5%、男性は20%以上が高尿酸血症の基準に当てはまるようです。男性は5人に1人とは驚きです。

だからと言って、尿酸値が高い人みんながみんな痛風の症状を呈してくるわけではありません。もちろん、基準値を超えた全員が治療対象というわけでもありません。

 

 

 

痛風の治療対象となる人

  • 血清尿酸値が9mg/dl以上の人
  • 血清尿酸値が8mg/dl以上で、高血圧や心血管系疾患がある人
  • 血清尿酸値が8mg/dlを超えていなくても、痛風の症状を認める

 

診療所に来られる患者さんの中にも、尿酸値が8mg/dlぐらいで、

「先生、まだ痛風は起きてないっちゃけど、薬飲まんでもいい?飲みたくないっちゃど」って人ももちろんいます。

 

そうね、まだ飲まなくてもいいよーとは言いますが、

第三のビールを1日3本に加えて、焼酎1合飲むのはやめてほしいなあと思ったりしています(なかなか頑固で難しいです)。

たとえプリン体が含まれてなくても、アルコールそのものの代謝の過程も尿酸値に作用すると言われています。残念ながらガイドラインに明記されてます。

「プリン体ゼロだから飲み放題だ\(^o^)/ワーイ」ってなってた方、

どうか誤解なきようお願い致します。

 

 

 

尿酸値を下げる薬

尿酸値が高い患者さんは、3パターンに分けられます。

 

尿酸産生過剰型(日本人の12%)

尿酸排泄低下型(日本人の60%)

混合型(日本人の25%)

   (全部足しても100%にならないけど・・・)

 

と言われています。

尿酸値を下げるお薬として、「尿酸産生抑制薬」「尿酸排泄促進薬」とがあります。

 

理論から行けば、

産生過剰型の人には「尿酸産生抑制薬」を、

排泄低下型の人には「尿酸排泄促進薬」を、

とするのが理想的だとは思われますが、

 

結論から言うと、型に関わらず、第一選択薬となるのは

「尿酸産生抑制薬」になります。

 

理由としては

  • 3パターンのうちどの型かを調べるのは手間がかかるから
  • 「尿酸排泄促進薬」を使用した場合の副作用(尿路結石)が嫌だから

 

なのです。

「尿酸産生抑制薬」を使っとけば、大きな間違いはない、ということなのでしょう。

 

では、それぞれの薬についてみていきます。

 

1 尿酸産生抑制薬

具体的な「尿酸産生抑制薬」のお薬の名前としては、古いものから

  • アロプリノール(ザイロリック®︎)
  • フェブキソスタット(フェブリク®︎)
  • トピロキソスタット(トピロリック®︎)

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になります。

トピロリック®︎に関しては発売から4年目になるので、まだガイドラインには記載されていない薬になります。しかし、ザイロリック®︎のように腎機能による容量調整がいらないことから、使い勝手の良い薬として最近は重宝されるようになってきています。

また、尿酸の治療を開始すると、尿酸値が下がる間に痛風発作が起きやすくなります。痛風発作は、尿酸値の変動が引き金となって起こります。トピロリック®︎は従来の薬と比較してそれが少ないと言われています。

(※トピロリック®︎の会社の回し者ではないですよ)

 

「尿酸産生抑制薬」を始めたけれどもなかなか目標まで下がらない・・・という時には「尿酸排泄促進薬」との併用もありです。ただしこの場合は腎機能に注意する必要があると思います。

 

 

2 尿酸排泄促進薬

具体的には

  • ベンズブロマロン(ユリノーム®︎)
  • プロベネシド(ベネシッド®︎)
  • ブコローム(パラミヂンカプセル®︎)

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があります。

これらを使うときには、尿路結石が出てくる可能性があるので、尿アルカリ化薬(ウラリット®︎)を併用して、尿路結石が起きやすい酸性尿の状態を脱却するように努めます。

 

 

 

痛風発作が起きたときの鎮痛薬

1 NSAIDS

 

「痛風発作が起きたとき、NSAIDSを使いましょう」と、大学生のときに授業で教わりました。

でも、NSAIDSだからなんでも投与していい、というわけではなさそうです。

添付文書上では、「痛風発作」に適応が通っているNSAIDSは、

  • ナプロキセン(ナイキサン®︎)
  • プラノプロフェン(ニフラン®︎)

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となってます。

 

痛風発作に使ってはいけないNSAIDSもあります。

それはアスピリン(バファリン®︎)です。

アスピリンは、少量投与で尿酸値を高くし、大量投与で尿酸値を下げます。じゃあ大量投与すればよさそう、痛みもなくなるし尿酸も下がるんでしょ?と思いがちですが、痛風発作中はダメです。

というのも、痛風発作中に尿酸値が下がると痛風発作が悪化したり、遷延したりするからです。

それと同じ理由で、尿酸値を下げる薬たちも痛風発作中は増量したり、新規に始めたりしてはてはいけません。尿酸値を下げる薬たちを飲んでいるときに痛風発作が起きたときには、鎮痛剤と併用して同量を飲み続けましょう。

尿酸値を下げる薬を飲んでない場合に痛風発作が起きたときには、発作が治まって2週間後〜少量から飲み始めましょう(実際にどのくらいの量から投与したら良いかは添付文書に記載があります)。

 

やや脱線しましたが、

痛風発作に対してNSAIDSを使用するときには、例として

  • 初日:ナイキサン®︎300mgを3時間ごとに3回まで投与
  • 2日目以降:ナイキサン®︎400〜600mg/日で投与

 

とします。

 

 

2 ステロイド

腎機能障害(eGFR<60ml/min/1.73m2)や胃潰瘍などの症状があり、NSAIDSが使えない・使いにくい患者さんがいます。

そんな方には、ステロイド(プレドニン®︎など)を使って痛みを和らげるのも良いとされています。

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海外の論文にはなりますが、NSAIDSとステロイドとで鎮痛効果に差はなかったとするものもあります。

(ステロイドを使うときには、感染がないこと、耐糖能異常が問題にならないこと、を確認することが必要ではあります。)

 

実際の使い方としては、

プレドニン15m7日間→10mg3日間→5mg3日間 とした例もありますし、プレドニン20mg未満を7日間を超えずに投与するのが良い、と言う報告もあります。

一定の基準は無いようですが、いずれにせよ、3週間のステロイドの連続使用の後には副腎抑制が起きますので、これを超える投与はダメだとは思います。

 

 

 

痛風発作の予防のための薬

昔からある薬で、コルヒチン(コルヒチン®︎)があります。大学生の時にも教わるぐらいの薬です。

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白血球が関節内に集まるのを抑え、痛風発作を前段階でとどめます。

発作が起きそうだなってときには1回1錠(0.5mg)飲みます。

発作が頻回に起きる人の場合には、「コルヒチンカバー」として連日定期服用することもあります。

また、尿酸値を下げる薬を使用し始めるのと同時に「コルヒチンカバー」する例もあります(まだ今の所、尿酸値を下げる薬を新規に始める人がいないので、使ったことはありませんが今後使用するかもしれません)。

 

 

 

さいごに

以上、つれづれなるままに痛風について書きました。

駄文ではありますが、誰かの何かしらの参考になってくれれば幸いです。