以前、こちらの記事を紹介させて頂きました。
こちらは血尿についての話でしたが、今回は
「蛋白尿」についての話です。
蛋白尿とは
蛋白尿とは、その名の通り、尿の中に蛋白が混じる状態のことをさします。
健康診断では1+、2+とかと記されるかと思いますが、具体的な量としては
1+:30mg/dl
2+:100mg/dl
3+:300mg/dl
4+:1000mg/dl
となります。
蛋白尿を呈する病気とは?
本当に、本当に色々あります(ので詳細は割愛します)が、健診で指摘されそうなものとして、
- 起立性蛋白尿
- 腎硬化症
- 糖尿病性腎症
- 腎嚢胞
- 多発性骨髄腫
- IgA腎症
- 膜性腎症
- 巣状糸球体硬化症
- 微小変化型ネフローゼ
- 巣状糸球体硬化症
- ANCA関連血管炎
- 多発性骨髄腫
- SLEなどの自己免疫疾患・・・・・など実に多数です。
蛋白尿を指摘されて、病院で行う検査とは
診療所レベルで可能な最初のアプローチとしては、
「尿検査」「腎、膀胱エコー」の2つ。
3ヶ月くらいの間に2〜3回尿検査を繰り返す
何度か尿検査を繰り返します。
(—)→一過性蛋白尿 ほぼ問題なしです。
(+)→持続性蛋白尿であるため、早朝尿検査を行います。それでマイナスであれば起立性蛋白尿と判断されますが、それでも(+)の時には尿蛋白定量(g/gCr)を測定します。随時尿尿タンパク、随時尿Creにて計算できるので、蓄尿は必要なく、診療所に来てもらったその日に普通にできる検査です。
腎、膀胱エコー検査にて形態学的異常をみる
腎臓の萎縮、腎嚢胞、片腎などの形態異常が発見されるかもしれません。
とりあえず、軽微な尿異常である場合は「尿検査」「腎、膀胱エコー」の2つをチェックして、それからどうマネジメントしていくか考えるようにしています。
もちろん、SLEやANCA関連血管炎、多発性骨髄腫などの疾患を疑う場合には、血清補体価やANCA関連の抗体、M蛋白などなど・・・診療所レベルであっても採血で調べられるものはたくさんあります(全て外注になりますが・・・)。
しかし、やはり診療所レベルでは限界があります。
それは「腎生検」が出来ないこと。
以前勤めていた病院では腎生検も普通にやっていたので、腎生検したいと思った場合も腎臓専門の上級医に相談して・・・という感じでした。
しかし、僻地でひとりぼっちの診療所ですから相談できる方もいません(泣)。
ネフローゼ症候群であれば当然紹介しますが、それは満たさないけどなんか蛋白尿が出てる・・・という方もちらほら。
交通手段を持たない高齢者の方も多くおり、山を降りるのも一苦労。
「どうしても」紹介が必要という、明確な基準を確立しておく必要があります。
持続性尿蛋白が出ていても経過を見ていて良い場合とは
- 尿蛋白が軽度(±、1+)であり、その後も尿蛋白が増加してこない場合
- 腎機能正常で、尿蛋白定量0.5g/gCr以下の場合
これらの人々は、腎硬化症や腎嚢胞などに該当する可能性が高いかと考えています。
持続性尿蛋白が出ていて腎臓専門医へ紹介した方がいい場合とは
- 尿蛋白2+、3+の場合(これだけでは紹介しませんが、その後尿蛋白定量にてひっかかると思うので、どっちみち紹介になるかと)
- 尿蛋白定量にて0.5g/gCr以上の場合
- 血尿も見られる場合(血尿に関する過去記事でも触れましたが、これは蛋白が1+であっても、必ず紹介します。)
ちなみに、蛋白尿が出ていなくても、40歳未満ではeGFR<60ml/min/1.73m2、腎機能の安定した70歳以上ではeGFR<40ml/min/1.73m2、それ以外ではeGFR<50ml/min/1.73m2で腎臓専門医への紹介を考慮します。
(自分の忘備録的に記載させてもらいました)
さいごに
「蛋白尿が出ている」状態は、(ネフローゼでもない限り)症状がありませんので放置しがちです。
記事で述べましたが、尿に蛋白が混じる疾患も生理的なものから重大なものまで色々ありますので、もし検診で尿蛋白が指摘されたらかかりつけ医へ相談しましょう。
心配であれば「尿に蛋白が混じってますけど、検査しないで大丈夫なんですか?」と勇気を出してツッコんでみてください。