ある日職場に電話がこのような電話がかかって来たことありませんか。
「〇〇様は、節税はどのようにされていますか。」
「節税って興味ないですか。」
「仕事で使っている必要経費を使って節税してみませんか。」
私が初めてこの電話をうけたのは
新社会人、研修医1年目として病院勤務が始まった4月か5月。
毎日目の前の仕事にてんやわんやで社会のことは何もわからない状態でした。
PHSの電話口では、優しそうな声の人が
「節税することでより多くのお金が手元に残せますよ!」
「あなたの大学や病院の先輩も多くの方がされていますよ!」
などの言葉巧みに電話口で語ってきます。
(先輩もしているのか・・・確かに節税って大事そうだしな)
と興味があったので
その時は、とりあえずアポイントだけ取って電話を切りました。
その日のうちに先輩に相談してみると、、、
「あぁ、それダメなやつだよ。詐欺が多いから気をつけて」
と教えてもらって慌ててキャンセルしたのを今でもよく覚えています。
当時は慌ててキャンセルしたものの、何がダメなのかさっぱりわかりませんでした。
しかし月日を経て、だいぶ何が問題かわかるようになりました。
新社会人は知らないことが多く、カモにしようとする人が絶えません。
特に医師はマネーリテラシーが低いことも多く、かつ真面目でやっているから自分は騙されないという自負もあったりして騙されることも多いようです。
実体験として、昨日集まりで後輩研修医と飲んだ際、
「大阪の新築区分マンションを複数購入して節税を頑張っている」
と笑顔で語っていました。
色々と話してみましたが、本人も細かいところは全然分かっていないそうでした。
内容を深く理解せずにそのような投資(?)を行なっているのは良くない事だと諭してみましたが、ピンと来ていない様でした。何年後かに気づくんだろうなと思います。
そこで今回の主題
新社会人に忍び寄る、「新築区分マンションによる節税」はなぜダメなのか
できるだけわかりやすく書いてみようと思います。
この記事を読んでくださる方の中から、騙される人が1人でも減ってくれればと思います。
- 「所得税、住民税」と「節税」の仕組み
- 不動産で節税できるというシステム
- 不動産で赤字がでれば節税できるが、決して得したわけではない
- 「節税を」と言っている時点でその不動産は買わない方がいい
- その不動産が将来のための資産になるという幻想
- 家賃保証に隠されている闇
- 借金返済以外にも様々な費用がかかる
- まとめ
「所得税、住民税」と「節税」の仕組み
まずは所得税、住民税がかかる仕組みについてお話します。
皆さんご存知かと思いますが、日本は累進課税です。
収入が増えれば増えるほど支払う税金が増えます。
下記の表を参考にすると、
年収1800万円以上の方は、1800万円以上の稼いだ分には40%の所得税がかかることがわかります。
ここで登場する言葉が
「課税所得(可処分所得)」
です。
所得税は収入の金額すべてにかかるわけではありません。
下の表に詳細がありますが、必要経費を差し引き、様々な控除を引いた後に残った金額である「課税所得(可処分所得)」に応じて所得税は決定されます。
※STEP1-3のみ注目してください
この表は収入から必要経費を引いた金額、そこからさらに所得控除を引いた金額が課税所得となり、その額に応じて納税額が決まる、ということを表しています。
つまり、
収入 ー (必要経費 + 所得控除) = 課税所得
となります。
課税所得が多ければ多いほど納めなければいけない税金が増えるわけです。
そうなれば、課税所得を減らしたい、となりますよね。
課税所得を減らすには、必要経費 または 所得控除 を増やせばいいわけです。
<要点① 節税できるのは課税所得を減らすから>
ここまでご理解いただければ次のステップに移ります。
不動産で節税できるというシステム
不動産を購入して、賃貸経営を始めたとしましょう。
すると、あなたは、
「本業の仕事」
に加えて
「不動産経営者」
となります。
不動産経営も事業になり、不動産に伴ってかかった費用は「経費」として扱われます。
不動産を所有すれば(特に購入した当初は)「必要経費」がでて、その必要経費分が
課税所得を減らすことができるので、節税になるわけです。
不動産所得で赤字がでた分課税所得が減り、
結果として納税額が減らせるという仕組みです。
<要点②不動産による経費・赤字は課税所得を減らす>
不動産で赤字がでれば節税できるが、決して得したわけではない
節税するためには、(不動産経営で)赤字を出さなければならない
わけです。
あなたの所得税率が仮に23%だったとしましょう。
(細かい値は無視して考えると)
課税所得を100万円落とせば23万円節税できます。
しかし逆に言えば
23万円節税するために100万円赤字を出さなければならない
23万円節税できたとしても結果として73万円損しているわけですから
結果的には損しているのです。
<要点③節税の為に赤字を出すと、総合的には損をする>
「節税を」と言っている時点でその不動産は買わない方がいい
「節税を」がセールス文句の不動産販売会社は
「不動産で赤字を出しましょう」
と言っているようなもんなんです。
そもそも価値ある不動産とは
大前提として「収益を生み出すもの」であって
「赤字を生み続ける物件」
は購入価値がありません。
それは先ほど説明した通り、節税しても節税した金額以上に損失が発生しているからです。
節税に関して言えば、
「収益が得られる物件でも、一時的に赤字をだすことがあり
その際、救済措置として節税をして、多少の赤字を取り戻せる」
くらいに利用する程度に利用するだけです。
あなたは、節税するためだけに赤字経営をし続けるんですか。
という話になります。
<要点④節税が謳い文句の不動産は、赤字を生み続ける負債である>
その不動産が将来のための資産になるという幻想
新築区分マンションでよく耳にするセールストークは
「35年後には、年金代わりになりますよ」
というもの。
35年後の物件といえば、結構な築古物件です。
そもそも入居者がつくかも問題ですし、35年も経てば修繕費も結構かかります。
収入以上に出費がかかる可能性が高く、年金代わりというよりはむしろ
年金を蝕む存在になります。
また、
「最悪自分が住んでもいいですよ」
というセールストークもありますが、
逆にあなたは30年後に1Kの部屋に住みたいですか?と問いたい。
<要点⑤新築ワンルームマンションは年金にはならない>
家賃保証に隠されている闇
「仮に空室が出ても、うちの会社で家賃保証するから大丈夫ですよ」
というセールストークがあります。
空室での家賃保証は、仮に部屋に空室が出たとしてもその会社が家賃保証をしてくれるので家賃収入は滞らないですよ、
というものです。
しかしこれには罠があり
家賃保証する金額は年々変更されるんです。
一般的に新築マンションは一番家賃が高く入居者を集められます。
そこから入居者が変わるたびに徐々に家賃が減っていくものなので
徐々に家賃収入が減るのは当然です。
悪質な新築ワンルームマンションは
新築時の家賃収入 ー 毎月の借金返済額
がほぼ同等かちょいマイナス(月3000円ぐらい)に設定されていることが多く、
そこから収入が増えることはありませんので
赤字の一途をたどるしかありません。
結局家賃保証されていても、金額が下がるので毎月の出費はどんどん増えていきます。
<要点⑥悪質な物件は所有するほど赤字>
借金返済以外にも様々な費用がかかる
ただでさえ借金返済にかつかつな状態にもかかわらず、
- 不動産の固定資産税
- 空室対策の費用
- 修繕費
- 修繕積立金
など、不動産を維持する上でかかってくる費用はたくさんあります。
物件購入前に販売業者がシュミレーションを作ってくれることもありますが、
そもそもそのシュミレーションが甘々なんです。
かかるべき費用を計算にいれてなかったりとずさんなケースも多く
予想よりはるかに出費することがあります。
<要点⑦収益が得られない物件は維持するのも大変>
後々家や車を購入する場合に困るかもしれない
あなたが将来家や車を購入するとして
銀行でローンを組む可能性があると思います。
銀行からお金を借りるには、審査を受けることになりますが
このような赤字物件を購入している時点で
審査落ちの対象になる可能性があります。
収益が全然出ない物件は負債として銀行からみられます。
借金を抱えた人間にお金を貸したくないのは当然ですよね?
銀行はあなたのことを
価値のほとんどない2000万円前後の借金をしている方
(不良物件を掴んでしまうような方)
と判断します。
そこまで考えて購入を検討する必要があるんです。
<要点⑧不良物件を掴むと赤字は増え続ける上に、お金を借りることもできない>
まとめ
いかがでしたでしょうか。
なかなか分かりにくいかもしれませんが、
新築区分マンションがよくないことは伝わったのではないでしょうか。
「新築区分ワンルームマンションを買えば節税はできるが、
それ以上の損失がはるかに大きく、得ではない」
ということをご理解いただければ幸いです。
儲かる物件はすぐに売れますので、わざわざ電話営業することはありません。
電話で販売してくる時点で、ハズレ物件と考えて問題ないでしょう。
こちらの動画が大変分かりやすくまとめられておりました。
よろしければご参照ください。
「買ってしまうと持ってても地獄、売っても地獄」という言葉が印象的でした。
変な物件を購入して変な節税するくらいなら、真っ当に
「iDeCo」や「ふるさと納税」を上手にすることをお勧めしますよ。